センスでおわらせない
中途採用が主体で人材の育成は個人の努力次第。従来のそのような採用と育成に対する中小企業の考え方は変わってきています。現場で業務を行う人材も、マネジメントを担う人材も足りない。この状況をなんとかするため、新卒採用が増えつつあり、人材育成への投資も増加していると言われています。一方で、これまで育成に力を入れてこなかったために、社内で人を育てるノウハウが溜まっていない企業も多い。私が中小企業で働き始めた時に、現場でセンスという言葉をよく耳にしました。あいつは学歴があるのに仕事のセンスがないとか、逆にあの若手はセンスがいいぞとか。確かに同じように新卒で入社しても、仕事の上達が速い人と遅い人がいる。ではセンスとはいったいなんだろう?生まれつきの才能なのか?それとも磨くための何らかのコツがあるのか?一方、日々仕事を経験していれば誰でも徐々に上達する。これは当たり前のことに聞こえるかもしれないけれど、実はそこにセンスと言われていたものを理解するヒントがあります。センスと聞いて私のように悶々とする人々の頭を整理してくれる概念。それが経験学習なのです。
経験学習
経験学習は、アメリカの教育学者デイビッド・コルブによる学習モデルで、4つの概念を通じて「経験」から学ぶプロセスを説明しています。

①具体的経験:直接的な経験や活動を通じて新しい状況に触れる
特に、自分の力を超えて少し背伸びをしなければならない、挑戦的な仕事を経験が重要とされる
②内省的観察:具体的経験を振り返り、その体験からの気づきや学びを深める
いったん仕事現場から離れ、自分が経験したことを俯瞰的に振り返る
③抽象的概念化:内省的観察で得られた洞察を元に、理論や原則を形成する
経験と振り返りを基に、次から仕事を進める際のルールやルーティンを自分で作り上げる
④能動的実験:抽象的概念で構築した理論を実際に試してみる
自分で作ったルールやルーティンを使って仕事をやってみることで、磨きをかける
人は経験の積み重ねの中から仕事のコツを見つけ出して、自分のものにするための仕組みを無意識に回している。より円滑に回るようなれば効率的にコツを掴むことができるはずです。私たちにできることは、経験学習という習慣に関する知識を職場で共有すること。この習慣を自覚的すること。つまり本人が経験学習のサイクルを自覚的に回し、上司や同僚がフィードバック等により内省を自覚的にサポートすること。である。センスという言葉は便利である故に、育成を検討する際の思考停止ワードになりかねません。センスとは何かを一歩踏み込んで考え、誰にでも手の届く習慣であることを理解する。そして、その習慣を強化するために、自社では・自分の組織では何が必要だろうか?と考え始めることが、育成を考える最初の一歩になるはずです。
